南アルプス・仙丈ヶ岳登山に参加して

81日から2日にかけて南アルプスの仙丈ヶ岳に登山してきました。仙丈ヶ岳は南アルプスの赤石山脈の北部にある標高3033Mの山で百名山のひとつにもなっています。仙丈ヶ岳の南側には塩見岳に至る長大な仙塩尾根が連なっており、尾根の間には、東側に小仙丈カール・北側に藪沢カール・南東側に大仙丈カールと三つのカールを擁し、また、高山植物の非常に豊富な山として知られ、「南アルプスの女王」とも称されているようです。参加者7名(沖本、松原、谷口、家村、安楽(谷口友人)、鈴木、大久保)は午前5時に水無瀬駅前ロータリーに集合して、乗用車2台に分乗して長野県伊那市長谷村の戸台口バス停を目指しました。中央自動車道の伊那ICで下り、一般道に入って天竜川を渡り、仙流荘・戸台口バス停の駐車場に到着。既に沢山の乗用車が止められており、我々は河川敷に駐車することになりました。ここから南アルプス林道を通って登山口の北沢峠方面までは一般の乗用車は通行止めとなっており、午前9過ぎの長谷村村営バスに乗り換え、約50分程度で北沢峠の手前の大平山荘前で降車しました。この付近の標高は既に2000Mもあり、下界とは違って涼しい気温でした。荷物を整えた後、登山を開始しました。宿泊予定の馬ノ背ヒュッテまでは薮沢新道コースを通って登ることにしました。登山道に入って、最初は原生林の中の緩やかな登山道でしたが、しばらくすると急な坂となり、さらに足を進めると薮沢にかかる丸木橋を渡り、ここからは薮沢に沿って登って行くことになりました。かなり登ってきたところで小雨が降り始め、雨具に着替えて、さらに登って行くとマルバダケブキの群生を見かけました。この辺りまで登ってくるとすでに雨も止んでいました。少し歩き出すと最初に自家発電機の音が聞こえ、その後、靄のかかった前方に山小屋らしき建物が現れてきました。馬の背ヒュッテに到着したのは午後3時頃で、ほぼ予定通りの行程(約3時間半)でした。馬ノ背ヒュッテはログハウス風のニ階建て(中ニ階を入れると三階)に建てられており、トイレは別の棟にありました。我々が山小屋に到着してからも登山客が続々と到着。この小さな小屋に200名位以上は入ったかも知れません。当然、寝る場所は非常に狭かったです。夕食にはカレーを食べ、その後、山小屋の生ビールをいただき午後7時過ぎには寝床に入りました。寝返りを打つほどのスペースもなく熟睡できないことから、毛布を持って1Fの食堂に入り、テーブルの下で寝ることにしました。午前3過ぎには話し声が聞こえてきて目を覚ましましたが、ご来光まで時間があることから毛布を被ってテーブルの下でじっと横たわっていました。午前4時半頃から、小屋の周囲に大勢の人たちが集まってきており、私もカメラを持って外に出て、陽が昇るのを心待ちしていました。午前450分過ぎから東の空が明るくなりはじめ、甲斐駒ヶ岳の右下方から朝日が昇り始めました。この日は天気が非常に良くて綺麗な日の出の写真を撮ることができました。その後、我々は午前520分頃に山小屋を後にしました。ヒュッテから先は、しばらくジグザグの道を登ると、馬ノ背の稜線に出ました(丹渓新道との合流点)。ハイマツが生い茂る稜線を少し進み、馬ノ背ヒュッテを出発して約1時間経過したころ、薮沢カールのお椀の底のところに建つ仙丈小屋と仙丈ヶ岳の頂上らしきものが見えて来ました。また、北方面を振り返ると遠くに中央アルプス、穂高連峰が、東方面に目を向けると鋸岳の向こうに八ヶ岳、その向こうに浅間山が見えてきました。仙丈小屋下ではカールからの谷水が流れており、周辺には黒ユリ、グンナイフウロ、キバナシャクナゲ、ミヤマシオガマ、ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイなど高山植物の花を見ることができました。仙丈小屋に到着した頃、数回にわたりヘリからの物資が小屋の広場に降ろされていました。仙丈小屋は新しく、水洗用の浄化槽設備を持った山小屋で、風力発電用のプロペラが十数機並んだ、近代的なものでした。ヘリによる輸送が終わってから、仙丈小屋の横で朝食としました。朝食後、薮沢カール上の稜線を伝って仙丈ヶ岳頂上を目指して登って行きました。仙丈小屋を出発して約40分程度で仙丈ヶ岳(3033M)の頂上に到着。頂上からは大展望の素晴らしいパノラマで、日本第2の標高の北岳(3193M)、間ノ岳(3189M)、穂高連峰、八ヶ岳(2899M)、甲斐駒ヶ岳(2967M)などが見えました。ただ、北岳の左奥に見えるはずだった富士山が少しガスっていて見えなかったのが残念でした。早々と順番に頂上での記念撮影を終え下山を開始しました。次は小仙丈尾根を通って小仙丈ヶ岳を目指しました。ガレキの道をしばらく歩くと、小仙丈尾根からは左下方に昨夜宿泊したヒュッテが小さく見えていました。途中、シカ移動経路調査中の標識も目にしました。小仙丈ヶ岳に向って右後方を振り返ると美しい小仙丈カールが見えました。仙丈ヶ岳頂上から50分程歩くと小仙丈ヶ岳(2855M)に到着。ここでも短めの小休止を兼ねて記念撮影した後、バス停のある北沢峠を目指して下り始めました。小仙丈岳を通り過ぎてしばらくすると樹林帯に入り一気の下りとなりました。さらに大滝の頭を過ぎ、尾根道を下り北沢峠に向かって退屈な道が続きました頂上からはゆっくりしたペースで約3時間半が経過した頃(正午前)に北沢峠に到着しました。北沢峠の長衛荘前で昼食をとり、午後1時の村営バスに乗る予定でしたが、当日は登山客が大勢ということで、臨時バスが運行されていました。バスに揺られ、半分は居眠り状態で40分程度で戸台口の仙流荘に到着。仙流荘の温泉でひと風呂浴び、疲れを癒して帰ってきました。(Y.O)

追記:「丈」とは長さの単位であり、「仙丈ヶ岳」という山名は、この山が高いことを比喩的にあらわしたものだと考えられる。しかし、1丈の長さは約3.0303mであり、仙丈ヶ岳の標高を丈を単位として表わすと約1000.79丈となる。まさに「千丈ヶ岳」である。